最近、有給休暇についての相談が増えています。
これは、インターネットの普及などで、いいも悪いも情報が手に入りやすくなったことが主な要因かと思います。
それに伴い、労働者の権利意識は、昔に比べると格段に高くなっています。
この記事では、有給についてのよくある勘違い、会社からの相談事例も交えて有給について考えていきたいと思います。
社長!こんなことありませんか?
パートにも有給は与えなくちゃいけないの?
パートにも有給って与えなくちゃいけないの?
このような問い合わせは非常に多いですね。
結論から申し上げると「与えなければなりません」
正社員や週30H以上働く方と同様の日数を与える必要はありませんが、
入社から6か月以上継続勤務をし、全労働日の8割以上出勤したパートや
アルバイトにも有給を与えなければなりません。
付与する日数としては、下に掲げる表を参考にしていただきたいのですが
勤務年数、所定労働日数に応じて、通常与える有給休暇に比例した日数の
休暇を与えることになります。この与え方を「比例付与」と言っています。
そもそも有給の目的は、働く方の心身のリフレッシュを図ることです。
パートやアルバイトにもリフレッシュしてもらう必要があります。
有給休暇は、条件を満たせば法律上、当然に発生します。
労働者の有給取得の申請をもって発生するものではありません。
これってすごく強い権利なんですね。
強い権利であるがゆえに、労働者とのトラブルが多いですね。
どのようなトラブルがあるのか見ていきましょう。
有給の取得を断わっていい?
社長!4月1日から3日間有給を取らせてください!
ダメだよ。みんな忙しそうだろ?頑張ってくれよ!
これってどうですか?
先ほども申し上げた通り、有給は、条件が揃えば法律上当然に発生する
とても強い権利なんです。
どういうことかというと、労働者が4月1日に有給を取ると言われた場合、
使用者が時季変更権(あとで詳しく説明しますね)を行使しない限り、
使用者側は拒否できません。
つまり、冒頭のやり取りは、完全アウトとなります。
有給の取得理由を聞いてもいい?
社長!有給を取りたいのですが・・・
何にために休むの?
何のために有給を利用するのか、聞くこと自体に問題はないと思います。
ですが、利用目的を聞いて
な~に~ 彼女と旅行にいくだと??そんなの認めん!
理由を聞いて、「認めない!」これは、アウトです。
労働者が有給取得を申請をした時点で、有給を与えなければならないのは前述のとおりです。
公休日を有給指定してきたけど、認めるべき?
社長!今度の土曜日(公休日)を有給扱いにしてください。
アルバイトやパート、日給の労働者ですとこういった指定がたまにあります。
そもそも休暇とは、「労働義務の免除」です。
その休暇について、給与の支払いがあるため有給休暇というのです。
つまり、最初から休みの日は、休暇になりません。
事後に有給指定をしてきたけど、認めるべき?
社長!この前風邪で休んだ日を有給で処理してください。
確かに労働者がいつ有給を取得するのかは自由に決めれます。ですが、その日に有給を取られてしまっては
会社も困ってしまうこともあるでしょう。
そこで、労働基準法では、使用者に「時季変更権」を与えています。
この「時季変更権」ですが、無制限に認めているわけではなく、有給の取得が正常な事業の運営に支障がある場合などに
労働者が希望する有給の所得を変更する権利です。
この有給の取得が正常な事業の運営に支障がある場合を判断するために、多くの企業では有給の申請は事前に行うことを
就業規則に定めているケースが多いでしょう。
また、有給は原則、日を単位としています。そのため、前日までに申請(取得時季を指定する)ように就業規則等に定めおき
事後の申出の有給を認めないといった取り扱いをすることは別段問題ないと考えます。
ですが、トラブル防止の観点から考えてみると、事後の申請という理由のみをもって、有給を拒否するのはちょっと厳しいように思います。
病気やケガなどで事前に申請が出来ないこともあるでしょう。
申請が事後になってもやむをえない理由があれば、取得を認めるといった規定も盛り込んでおくとよいかと思います。
退職直前に残りの有給消化を申請された
社長!今月末で退職しますが、明日からは今残っている有給を使って退職日まで来ません。
今までお世話になりました!
退職日まで有給を使うので、明日から会社には来ません。ってちょっと無責任なような気がします。
引継ぎが出来ていないのであれば、困ってしまいますよね。
だからといって、有給を取らせないわけにもいきません。
退職を控えている労働者であっても、法定の要件を満たしている以上は、退職を理由に有給を拒むことはできません。
特に退職予定者は、退職日以降は労働義務のある日というものがなくなります。
つまり、有給休暇の取得が不可能となってしまいます。
したがって、会社の時季変更権も行使できないと解されています。
退職時の有給の買取などについて、議論があるところですが、退職日までに消化できなかった(消滅する)有給の買取は例外的に認められています。(通常の有給の買取はできませんのでご注意を!)
引継ぎがうまくいってないのであれば、労働者に引継ぎをしてもらうことをお願いし、退職日を超えて有給休暇が残っているのであれば、買取することもできると話してみるのはどうでしょうか?
それよりも、会社としては、労働者が有給をとりやすい社内風土をつくることが重要ですね。
そうすれば、退職予定の労働者が「有給は労働者の権利だから」と退職直前に一気に有給を取るようなトラブルも減っていくのではないでしょうか。
やはり規定が大事です
有給で労働者とのトラブルに発展すると、会社はかなり不利です。
何度もお伝えしていますが、有給は労働者の権利です。
それも条件を満たせば、法律上当然に発生するとても強い権利です。
では、突然の有給申請に指をくわえていればいいのでしょうか?
労働者の権利なので、与えるべきものは与えてしまおう…
それもありかもしれません。そうすれば、労働者に対し、
会社もきっちりやるべきことはやっているんだ!
「会社がきっちりやっているのだから、君たちもやるべきことはやってくれ」と労働者に言いやすくはなります。
とはいえ、そういうわけにはなかなかいかない会社も多いです。
だから、もめるんです。だから、トラブルになりやすいんです。
有給を完全にブロックすることはできない以上、どうすればいいのでしょうか。
あらかじめ有給に関するルールを規定等に盛り込んでおくことをお勧めしたいです。
なにも起きていないうちに出来るだけ早く。
たとえば、以下の内容などを事前に規定しておくことが考えられます。
運用上のルールが、周知され全労働者の認識となれば、無理難題を持ちかけてくるようなことも少なくなると思います。
社労士からひとこと
そのほかにもいくつかあると思いますが、もし必要性を感じたなら、顧問の社労士の先生に一度相談してみてはどうでしょうか?ご不安があれば、当事務所でも無料相談・無料労務診断を承っております。お気軽に以下フォームよりお問い合わせください。
有給については、このほかにもおさえておきたいポイントがありますので、別の記事でまた解説しますね。