社労士が解説!労基署の調査が入る前に整えたい労務管理

目次

突然、監督署から呼び出しがかかる。

これは、もう慌てます。

こんな通知が来ました…どうしたらいいの?


藁にもすがるような感じで、それはもうこの世の終わりかというような表情で相談に来られる社長さんが後を絶ちません。

そんなに心配しなくていいですよ

と私も勇気づけながら、見せていただいた労務管理の資料から,
「そりゃ、慌てるよね」と心の中では感じてしまうケースも多々あります。

ですが、私を頼っていただいたわけですから、全力でサポートします。
ですから、「そんなに心配する必要ありませんよ」なんです。

実際にこういったケースがありました。

労基署から出頭依頼の通知が届きました。

上記のように,私の事務所に慌てて相談に来られました。

通知の内容は、「定期監督」。運悪く(?)監督・調査の対象になったようです。

定期監督とは、一般的な監督で、その年度の計画に基づき、監督署が任意に対象となる会社を選らび、監督署への出頭を要請したり、直接会社を訪問し調査・監督するものです。

対象になったからといって、別に狙われているわけではなく、くじに当たってしまった感じでしょうか…

一般に労働基準監督署の調査ってどんなことをを調べられるのでしょうか?

・時間外労働・休日労働に関する協定書が締結・届出されているか?
・未払い賃金が発生していないか?
・就業規則が作成されているか?届出はされいるか?
・定期的な健康診断は実施しているか?
・健康診断の結果を保管しているか?
・必要な帳簿類(賃金台帳、出勤簿、雇用契約書等)は、しっかりと調製されているか?
・衛生推進者は選任しているか?

などでしょうか。

ドキッとしますか?もしそうなら、今から少しずつでよいので、準備していきましょう。

定期監督は普段の労務管理がチェックされます。
不十分である部分はこれから少しづつ直していくという方法で大丈夫です。

突然やってくるのは申告監督です。

労働者が、監督署に申告をしたケースです。申告された事案全てが調査の対象になるとは限りませんが、違反が会社にあるという前提で監督官は、調査にやって来るため、ちょっと厄介なんです。

過去にこんなことがありました。

ある飲食店に申告監督が入りました。会社が割増賃金を払ってくれないとの申告だったそうです。なんの通知もなくいきなり事業所に監督官がやってきて、社長不在にもかかわらず、その場にいた従業員に対応を求めたそうです。

従業員といってもアルバイトです。何が何だかわからないですよね。結局、何をどうしたらいいのかわからないまま、「未払い賃金があると思われますので、精査の上、未払い賃金があるのであれば遡及支払をしてください」との内容の是正勧告書をそのアルバイトに手渡したそうです。

監督署に確認をしたところ、今回の件は、匿名の申告であるようでした。

匿名だと厄介なんですね。申告したのが誰かわかっていれば、その人を対象に精査すればいいのですが、それがわからなければ全員分を精査しなければならないんです。監督官に聞いても教えてくれません。ですが、この会社は私の顧問先です。給与計算は私が担当しており、未払いが発生しているなんて考えづらいです。

監督署に確認したのですが、やはり匿名であるため、申告した者が誰なのかは言えない。申告内容は「休憩を取ってないのに、給与から休憩時間分控除されている。その部分を払ってほしい」だったそうです。

会社は、「休憩時間はしっかり取らせている」従業員は「取ってない」真っ向から意見が対立しています。

さて、どうしたらいいものか?

会社からの休憩の指示がどうなっていたのか。
実態として休憩をしていたのかどうか。

このあたりがポイントになりそうですね。

会社としては休憩時間を与えていた

まずは、ヒアリングを行いました。

会社の意見
①休憩時間は、労働時間が8時間を超えるような場合は、60分取ってくださいと指示をしていた。
②忙しい時は、休憩を出来ない場合もあるが、ランチタイムとディナータイムとの間には中抜時間があり、その時間は自由にしていいことになっている。
③通常の時間でも、勤務時間帯の途中で、タバコを吸ったり、賄いを食べたりしてることもある。

従業員らにもヒアリングしました。

従業員の意見
①80%以上の方が、8時間を超える労働時間の場合、60分以上の休憩を取るよう会社から指示を受けていたと回答。
②実際に休憩が取れないことも多かった
③休憩が取れない場合に、代替時間を与えられることはなかったように思う。

これ、難しいですよね。
確かに60分の休憩を取るように指示はあったのかなと推測はできそうですが、実際に休憩が取れていたのかは微妙そうです。

結局、どうしたか?

ヒアリングの結果を十分に考慮し、社長とも十分な話し合いをしました。
その結果、以下の内容の回答書を労働基準監督署に提出することになりました。

給与に未払いがあるかどうかを精査するため、従業員・店舗管理者に聞き取り(ヒアリング)を行った。
その結果、
「休憩時間を取るような働きかけはあったこと」
「実際に休憩を取れたのかどうかは今になってはわからないこと」
「仮に休憩時間が取れていないとしても、各自で隙間の時間を食事や喫煙等で利用していたこと」
「ランチタイムとディナータイムの間の中抜け時間は自由に使っているようだったこと」
上記を考慮し、会社としては、未払い賃金はないもの判断しました。
したがって、遡及しての支給は致しません。
仮に未払いが発生していたとしても、今となっては、その時間数を把握するのは困難であるため、今後未払い賃金が発生しないような措置を講じることとします。

<以下に、講じる措置を具体的な内容を記載しました。>

この一回の回答のみで、すべて事なきを得たわけではありませんが、結果としては、未払い給与を過去に遡及して支払いをするというような結果にはなりませんでした。

社長の顔も相談に来た時より、笑顔が戻ったように感じました。

ありがとうございました。
今後は誤解が起きないよう労務管理を徹底します。

労働基準監督署の監督に備えるために

改善点や違法性を指摘されないような労務管理を行うことが一番重要です。日頃からの予防ですね。

☑ 労働時間の把握、管理を徹底する
☑ 給与計算時に、未払いがないように計算する(知らないところで未払いが発生しないようできれば、専門家にチェックをお願いするといいかもしれません)
☑ 定期的な健康診断を行う
☑ すぐに相談できる先を作っておく



ですが、しっかりと労務管理ができていると思っていても、出来ていないと指摘されることもあります。
指摘された場合は、しっかりと改善していくことが重要です。

そしてやはり大切にするべきは、従業員との距離感です。
従業員が働きやすい職場とは?
従業員との良好なコミュニケーションをとるためにはどうしたらいいか?

今回のように従業員から監督署に申告があるのは、「会社の労務管理等に少なからず不満を抱いている者がいる」ということです。
申告されることは、仕方がない。申告された内容は真摯に受け止め、少しでも改善につなげる何かを見つけられれば、従業員との距離もグッと近づき、働き甲斐のある会社づくりができるのはないでしょうか。

まとめ

上記で書いたように、できていると思っていても、会社には労務リスクが多く潜んでいます。それらはすぐに発見できるものから、プロではないと見つけられないものまでさまざまです。

すでに顧問社労士がいる会社は、相談してみてはいかがでしょうか。顧問社労士がいない会社も、実際に調査が入ってから慌てるのではなく、予防的な管理をおすすめします。

ご不安があれば、当事務所でも無料相談を承っております。お気軽に以下フォームよりお問い合わせください。
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